ryuji fujimura exhibition "process of desgining / desining process"



用途 : 展覧会 | 会期 : 2007.3.16-5.6 | 会場 : PRISMIC gallery

プリズミック・ギャラリーにて開催された個展。UTSUWA, K PROJECTなどのスタディ模型を時系列に沿って並べた。設計プロセスの手続きを提示することで、私たちの開放的な設計思想を端的に示そうとした。


会場風景


スタディ模型が正確に制作順に並べられ、オープンな設計の過程が展示される


建築からマンガに至るまで、あらゆる設計プロセスが等価に並べられる


A3普通紙に印刷された大量のイメージを、本のようなふくらみを持たせてホチキスで留める


K PROJECTの1/20模型。設計プロセスが透けて見えるような断面
   
   
設計のプロセス/プロセスの設計    
   
「こういう空間が気持ちよさそう」といったファースト・イメージも、「パブリックとプライベートの関係性」といったお約束のコンセプトも、ともに大事だけれども、それだけを頼りに設計はできないなあと、よく思う。    
   
私たちがやることと言えば、模型をつくり、その模型を見ながら、おかしなところを見つけ、それを修正するだけである。修正する内容は何でもいい。「この窓が大き過ぎる」だの、「この線の重なりが悪い」だの、案のバランスを崩している部分や、筋の通っていないようにみえる部分をみんなで淡々と話し合い、つぶしていく。    
   
それだけだと普通のことのように聞こえるが、その作業を無数に繰り返すことが自分たちのやり方だと、最近は思えるようになってきた。そこで大事なのは、「好き」とか「嫌い」の感情を捨てることと、時間を空けずにテンポよくやることだ。無心にスタディを続けていくと、やがてユニークな建築の「かたち」が育っていく。不思議なことに、「好きなかたち」とか、「嫌いなかたち」をあまりイメージしないほうが「かたち」はよく育つ。    
   
そう思うようになったきっかけは、「UTSUWA」という、10坪ほどの小さな食器店を設計したときだった。一般的に、建築の設計で床面積と外形の関係を検討することを「ボリューム・スタディ」と呼ぶが、私たちはあえてそれを外形のないインテリアの設計に応用した。少ない商品を大きなショーケースに数個ずつ展示するタイプの店舗と異なり、たくさんの食器をディスプレイするタイプの店舗だったので、商品のボリュームの配置を検討する必要があったのだ。    
   
そのときはまず、店舗が入居する物件の輪郭を敷地境界線のように見立て、そこに奥行き300mmの棚の寸法と、600mmの通路の寸法をそれぞれ配置して、いくつかの案を作ってみた。すると、細長い店舗の左右に棚を配置したときに生まれる中央の空間の寸法が中途半端で余っているように感じられたので、少し突起を作ってみようということになった。最初はおそるおそるつくり始めたのだが、やっていくうちにどんどん突起が増え、次第に突起だらけの空間になった。    
   
結果として、動線が左右に蛇行し、お客様が自然と長居できそうなユニークな空間が生まれた。お施主様によれば、「店舗の売り上げはお客様の滞在時間に比例する」そうなので、「蛇行型動線」のインテリアは効率が良さそう、ということで設計がまとまった。    
   
ル・コルビュジエは1914年頃から1965年に亡くなるまで、スケッチブックに通し番号をつけて、大切に保存したという。いつしか私たちの事務所でも、設計の過程で増え続ける模型のひとつひとつに通し番号をつけ、きちんと保存するようになった。設計中はそれらを事務所の棚にきれいに並べ、何度も眺める。そうすることで常に設計のスタートポイントを振り返ることができるし、それまでの案に新たなアイディアを重ねつつ設計を進めていくことができる。    
   
たった10坪のインテリアだが、短い設計期間の間に制作した模型は30個以上。コストを考えるとちょっとやり過ぎのように思えるが、リズムに乗って来るとこのやり方は、むしろ効率が良いように思う。無表情なボリュームが、次第に有機的なかたちへと進化する過程で、揺るぎのない論理的なものとなり、結果的に設計の無駄を省き、密度を上げるからである。    
   
以後、店舗だろうと集合住宅だろうと、建築だろうとハガキだろうと、規模や内容にかかわらず、どんな依頼が来てもこうしたやり方を展開するようになった。「好き」も「嫌い」も超越した最強の設計論はいつも、設計作業の終わる頃、ようやく完成する。私たちにとって設計とは、「ロジカルなかたち」と「かたちのロジック」を同時に探り、育てる作業なのだ。    
   
今回、そうした作業のプロセスをイメージできるよう、保存しておいたスタディ模型や記録写真を、時系列に沿って並列的に展示することにした。ひとつひとつのかたちも大事ではあるが、一連のスタディの流れの中で、ふっと気をためるように論理を紡いでいく、その間合いをギャラリーの空間全体で表現したつもりである。(藤村龍至)    

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